中小企業の現実に見合ったITツール導入の注意点

コロナ渦による突然の環境変化により、中小企業においてもテレワークへの対応などIT化を推進しなければならない状況となっています。しかし、いざIT化をしようと思うと「どこから手を付ければ良いのか?」「似たようなツール・サービスがたくさんあって選べない」「過去に導入したソフトウェアも活用できていない」といったことで悩んでいる企業も多いかと思います。今回は、中小企業がIT化を推進する際に、必ず押さえておきたい3つのポイントについて解説します。

1. 社内の業務を洗い出して業務フローの分析をする
IT化を推進する最大の目的は「業務の生産性を高める」ことです。しかしながら、「IT化する」ことが目的となってしまっており、特定のツールを十分な検討なく導入している例が少なくありません。こうした場合、逆に業務の生産性が低下してしまう危険性があるため注意が必要です。また、ITを導入しても生産性向上に繋がらない場合の原因の一つに、複数の部署又は複数の従業員が関わる業務を「全体最適」ではなく「部分最適」してしまうことが挙げられます。特定の部署が特定の業務をIT化して生産性を高めた結果、その業務の前後で受け渡しをする他の部署や他の従業員の業務の負荷が高まり、会社全体で見るとその業務が完了するまでの生産性は低下してしまう、といった例も多く見られます。
このような事態に陥ることを防ぐためには、IT化に着手する前に、IT化推進の準備として社内の業務を全て洗い出し、さらに他の部署や従業員との業務の受け渡しの関係を業務フロー図などの形で見える化して、「全体最適」を実現するための業務フローを検討した上で、その業務フローに最適なツールは何か、という観点でツール選定に移ることが重要です。

【業務フロー分析の例】

2. その業務の目的を達成するために必要な条件を明確にする
業務を効率化するITツールは、大企業が展開するものからスタートアップの企業が提供するものまで、似たようなものが乱立しているため自力で選定するのが難しいと感じる方が多いかと思います。また、選定をした後も月額課金型のサービスでは複雑な料金プランが用意されていて、「よく分からないから推奨されたプランで契約した」という例が多く見られます。このような事態に陥る最大の原因として、そのITツールを使って達成したい目的が明確にすることが大切なのは当然ですが、それに加えて「必要ないこと」を明確にすることが大切です。この「必要ないこと」を明確にしておかないと、メーカーや商社の営業マンから「こちらのプランだとこの機能が使えません」「こちらのプランだとこんなことも出来ます」と言われた時に「その機能は必要ない」と判断することが出来ません。特に会計や営業管理、生産管理のツールなどはオプション機能なども豊富に用意されていることが多いので、ツールを選定する際には「必要ないこと」を明確にしてから選定に臨んでみて下さい。

 

3. 運用ルールを構築する
目的を明確にしてからITツールを導入しても、「使っていない」という状況に陥ることは少なくありません。このような事態に陥ってしまう原因の一つとして、運用ルールを構築していないことが挙げられます。特に複数の部署や複数の従業員が使用する場合、一部の人が導入したツールを使わずに従来の方法で業務を処理していて、そのせいで運用が徹底されず、結果として誰も使わなくなってしまった、といった企業は少なくありません。また、ITツールを導入すると、システム上は自動的に次の部署や従業員に仕事が引き継がれるため、担当者が「従来業務では行っていたような連絡はもうしなくても良い」と考えてしまった結果、従業員間のコミュニケーションが失われて生産性が低下し、その結果使わなくなったという事例もあります。このような結果に陥らないためには、導入したITツールの運用ルールを構築して、関係する全従業員と経営者でルールと導入した目的を共有しておくことが大切です。また、運用を推進する責任者を定めて、運用上の問題が発生した時にすぐに対応が出来るように、予め予算を割り当てて使用できるよう、権限を与えるなどの対策も効果があります。

まとめ

IT化の推進は専門の人材がいない中小企業にとって、誰に相談すれば良いのかも分からず悩んでしまうことが多いかと思います。今回紹介した以下3つのポイントを押さえて、IT化に取り組んで頂ければと思います。

  1. 社内の業務を洗い出して業務フローの分析をする
  2. その業務の目的を達成するために必要な条件を明確にする
  3. 運用ルールを構築する

 

 

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